日本のスプラッター、80年代から現代へ。まいちゃんの日常
日本でスプラッター映画が盛んに製作されたのは、70年代終わりから80年代終わり。それ以降は、有名な作品だと『オールナイトロング』のシリーズなどがありましたが、決して80年代ほど盛んに沢山の作品が製作される事はありませんでした。簡単に予想されるのは、宮崎勤事件がきっかけで世間の目がより一層厳しくなったということです。
このような作品をR指定とよく聞きますが、R指定が明確にPG-12、R-15、R-18と分類されたのは1998年の事だそうです。1998年以前でR指定が付いたものは指定の年齢に達してない場合、成人の保護者の同伴があれば観覧できたといわれます。このR指定にあまり知られていない指定があります。
それが、「審査適応区分外」というものです。R-18より過激と判断された作品は一般の劇場公開は不可、主にソフト化などで流通したりする作品です。中には映倫を受けずに自主的に規制や、予算などの関係上劇場公開されない作品も多くあります。
00年代から徐々に始まったあるブームがあります。
それが「ゾンビブーム」。数年前には雑誌『ユリイカ』でも特集として取り上げられました。これには大変衝撃を受けました。確実にゾンビが文化的に注目されていると。
ゾンビ映画といえば海外のスプラッターの定番でもあります。
上記の様な映画はそれまで「B級映画」とよく言われましたが、突然のブームにより沢山の人に浸透し、今やA級ではないかと私自身は考えます。そんなスプラッターを取り巻く環境、時代の流れを確実に捉えた作品が『まいちゃんの日常』だと思いました。
ご存知の通り劇場での公開はされておりません。先程説明した「審査適応区分外」に指定された可能性があるのではないかと考えました。しかし、監督の佐藤サドさんに伺った所、映倫は受けていないとの事でした。
スプラッターによくある設定として、悪魔、ゾンビ、殺人犯が登場します。
しかし、『まいちゃんの日常』にはどれも登場しません。設定として、まいちゃんというメイドはどんな怪我でも治る不死身の肉体とあります。しかし、あくまでもSF的な設定であり、実際まいちゃんを解体するシーンは、狂気と偏愛、そして、まいちゃんを殺害し解体する事によるミヤコの快感とを思わせる猟奇的なシーンでした。このシーンは動物の臓器などを用いて、かなりリアルになっており見応えに凄まじいものがあります。パッケージにもある通り、「臓器愛」を感じさせる重要なものです。
撮影技法も注目の一つです。最後のシーンでは、かなりの迫力を出すカット割の速さ、白黒とカラーのカットの交差で完全に目が釘付けになります。白黒での猟奇的カットとカラーでの猟奇的カットがどんどん交差し、カラーでの赤い血しぶきがより一層際立って見える素晴らしいシーンでした。
今の時代にゾンビ映画以外で、ここまで猟奇的でグロテスクな映画があったでしょうか。私の知る限り『まいちゃんの日常』以上はありません。
監督の佐藤サドさん、フェチフェススタッフの皆さんと色々お話しさせて頂いた時の監督の言葉を今でもよく思い出します。「今って若い子でも80年代のアーティストとか好きな子が多い。80年代の文化が回ってきたみたい」
監督がふと雑談で何気なくおっしゃった言葉でしたが、私自身は凄く考えさられるものがありました。
80年代日本スプラッターの全盛期。そこから衰退し、ゾンビブームを経て、『まいちゃんの日常』。
それを考え、もし今後日本の作品で審査適応区分外のスプラッター映画がまた増えたら?映倫の指定は受けなくても劇場公開は当然不可能なスプラッター映画が増えたら?と想像しました。
そんな時がきたら確実にその草分け的な映画となるのは間違いなく『まいちゃんの日常』だと。
フェチフェス06にて、まいちゃんの日常と80年代スプラッターの伝説『ギニーピッグ』が一緒に上映されるイベントがありました。
数々の伝説、問題作である『ギニーピッグ』を上映するには想像もできないような困難があったと思われます。
しかし、2015年。この2作が一緒に上映されたのは必然であったのではないか?と私は思ってなりません。
何度か鑑賞していてエンドロールで大変な事に気づきました。美術協力に、私も大ファンの清水真理さんの名前があった事です。清水真理さんといえば、球体関節人間を主に製作されている人形作家さんです。
劇中でまいちゃんやミヤコが過ごす場所は終始、不気味に作られた部屋でした。そのセットの中に清水真理さんの作品があるので是非探してみてください。
そして、最後に主演である赤根京さん、小司あんさんのお二方。
・・・・可愛いぃぃぃ!!!!!
私がもし丸山さん演じる御主人様だったら・・・あんな無口でポーカーフェイスではいられない・・・多分、ずっとニヤニヤしてんだろうなぁと思い、メイドなど当然いない自室を見渡しため息を一つ吐くのでありました。
写真・イラスト・文=夢のアリス(フェチフェス05メインビジュアル担当)