女体愛好家 七菜乃による七菜乃展@渋谷アツコバルー arts drinks talk
「特殊モデル」「女体愛好家」として活動を続ける七菜乃さんが、彼女の原点でもある「ヌードは着衣」をテーマにした個展を開催。「女体愛好家 七菜乃による七菜乃展」である。会場は、渋谷中心地にあるアートスペース「アツコバルー ATSUKOBAROUH arts drinks talk」。
「アツコバルー」は、可動式の壁でスペースを区切ったり開放したりできる不思議な空間。「七菜乃展」は、必要最小限の壁だけを残して広さを演出していた。会場をグルッと取り囲む壁には、七菜乃さんがチェキで自撮りした写真が並んでいる。
「アツコバルー」の入場料はワンドリンク込み500円。お酒やソフトドリンクを片手に作品を鑑賞し、同好の士と歓談し、七菜乃さんと交流する……贅沢なひとときを堪能できる展覧会だった。
最近、七菜乃さんの活動の幅が広がっている。フェチフェス06では、トレヴァーブラウンさんのコスプレをお披露目。一鬼のこさんとのコラボでは緊縛モデルを演じた。そして、今年6月30日には、『七菜乃CLIPS』が発売された。写真とムービーを融合した詩的な映像作品である。七菜乃さんは、アート方面で飛躍を続けているのだ。
そんな七菜乃さんが、「七菜乃展」では、プロカメラマンによる作品ではなく、チェキで自撮りした作品を展示している。その意図はいったい何なのか。七菜乃さんにお話を聞いてみた。
鮮明さとの対極にある美しさ
――「七菜乃展」の意図や見どころなどを教えてもらえますか。
いつもは自分がモデルになって撮られることが多いのですが、今回は自分が撮るということで、自分で自分を撮っています。撮るのは自分でなくてもいいのですが、自分の方が楽なので自分を使ったということですね。
撮られるときは、特にヌードを意識しているわけではありません。逆に、撮る人が自分の撮りたいものを撮っているとき、その人が「ヌード」になっているのでは、と思っています。今回は自分で自分を撮っているから、自分が体の意味ではない「ヌード」になっているのかな。そこがいつもと違います。自分の見てほしいものが今回はあるので、皆さんに見てほしいな、と思っています。
――写真の中には合成したようなものもありますね。そうした写真を撮るのはどうしてですか。
あれは二重撮影です。一回撮って、もう一回自分の顔に別のものを重ねました。鮮明なのがそんなに好きではないんです。鮮明であることにどんな必要性があるんだろうって思うんですね。目に映っているものが全て見えているというわけではないですよね。それなのに、写真では、細かいところまで見えているのがいいとされているのは何故なのかなって。今の写真にあまり魅力を感じないのは、鮮明過ぎるからだと思います。
チェキは現代的なものじゃないですか。現代的なものを使っていますが、私の撮る写真はぼやけていたりして古いものになっています。時代が分からない感じがいいなあって思っています。
撮られる側から撮る側へ
――「七菜乃展」のテーマでもある「ヌード」について、考えていることを教えてください。
ヌードというと男性目線の「エロ」と切っても切れないですよね。「エロ写真」といわれるものも私は好きです。でも、それとは別に、消費されるだけでないものもあっていいかな、と思っています。
今回は「撮ってもいい」という女の子を撮らせてもらっています。そうしてできた写真は、見る人によって解釈が変わりますね。自分はこういうふうに思っているというのはありますが、それを相手に押し付けたくないんです。見る人がどう感じるのかな、というのは今回楽しみです。
――初日で何人の女性を撮影しましたか。
6人くらいですね。みんなとても面白い方でした。あまり人を撮るのに興味が無かったんですが、撮る側に回ったら自分が興奮してしまいました(笑)。
「女体愛好家」だから、女性の綺麗な体が目の前にあるということに興奮するんです。そして、撮りたいものを撮るということにちゃんと意識を向けなきゃ、と自覚しました。撮影している最中もドキドキしているのが分かって面白かったです。
――自分を撮るのと他人を撮るのとではやはり違いますか。
自分を撮るのは、思っているのを撮るので冷静で楽なんです。でも、他人を撮るときは気を遣うし、「いいなあ」と思うと感情が優先してしまうんです。カメラマンってこういう心境なのかな(笑)。
暗くなるとシャッタースピードが遅くなるので、その間「ブレちゃいけない」と思います。でも、シャッターがカチッと言うまでの間心臓がドキドキするんです。「揺れないで!」と思いました(笑)。他人を撮ることで、今まで体験したことなかった経験ができました。それだけでも大満足です。
――被写体の女性はどんな方が多かったのですか。
普段はヌードになっていないけれど「今回は撮られてもいい」という女の子たちばかりでした。「ヌードは着衣」とはいっても、普段やっていないことを彼女たちはここでやってくれるわけですから、それが嬉しくて……。素敵な女体を素敵に撮らないといけないな、と強く思いましたね。
『NANANANO DIARY』誕生秘話
「七菜乃展」では、『七菜乃CLIPS』の販売に加えて、10月25日発売予定の『NANANANO DIARY』が先行販売されていた。七菜乃さんが『NANANANO DIARY』の見どころを語ってくれた。
「自撮り写真に携帯が写っていると時代が分かるじゃないですか。『iPhoneで自分を撮るのが流行ったよね』みたいな歴史の中の一瞬になると思って作りました。
もともとブログに自分の写真を載せるために自撮りを始めたんです。そこからどんどんカメラを買ったりしてつながっていきました。今ならカメラをセルフタイマーにできるので携帯を写さなくても撮影できます。でも、携帯が写真に写り込むのが現代的で面白いな、と思って続けていたのが形になりました。」
時代とともに歩む七菜乃さんの記録として、『NANANANO DIARY』は非常に価値のある一冊である。
未来へと歩み続ける若きアーチストの可能性
「自分がどうなりたいと思うと、それに向かっちゃうから、そういうことを考えたくないんです。面白そうだなと思うことを積み重ねていったのが未来だと思っています。
今回撮るという経験をしました。その後に撮られるとまた違った表現ができると思います。あとは、写真に限らず、いろいろできることをやっていきたいな。
それから、今まで自分でいろいろやりとりしていたので、そこに時間がかかっていました。でも、最近は事務所に所属しているので、自分の苦手なことをやらなくて済むようになりました。事務所から新しいお仕事をもらえるので、自分がやらなかったところにも行けるのが面白いな、と思います。」
そう語る七菜乃さんは、笑顔がキラキラ輝いていた。それは、未来へと歩み続ける若きアーチストの可能性を象徴していた。
2015年12月18日から27日には、神田・神保町画廊にて「七菜乃展」が開催予定だ。今回の「女体愛好家 七菜乃による七菜乃展」とは異なる展覧会となることだろう。今後の七菜乃さんの活躍に期待したい。
・「女体愛好家 七菜乃による七菜乃展」詳細:http://l-amusee.com/atsukobarouh/schedule/2015/1022_3174.php
・七菜乃さんのツイッターアカウント:https://twitter.com/nana7nano
・七菜乃さんのオフィシャルブログ:http://www.diamondblog.jp/official/nana7nano/
写真・文=みみずく