ゆかいなゆかいな輸入DVDでみる映画の世界♪その3
マリオバーヴァの耽溺世界 撮影のエンジニアの時代
初期のマリオバーバ(伊)撮影監督作品を今回はご紹介します。フェチフェスの嗜好ということにこだわってここまで残酷血みどろ系の映画を立て続けに取り上げましたので、この辺でひとまず、血なまぐささの控えめな、それもむしろお上品な映画ともいえる「I Vampiri(1957年)」
監督/リカルド・フレーダ マリオ・バーヴァ
撮影・特殊効果/マリオ・バーヴァ
実のところこちらのマリオバーヴァ監督の作品をBlogの筆頭に、一番最初にもってくるぐらいなところなんですが。というのも私bavamarioと名前を拝借しているのは全ての入り口となったのがこのイタリアの監督の作品であったということが理由なのですから。
というわけで、特に今回はこの監督の初期の作品「I Vampiri」といういわゆる、ヴァンパイヤもの(上記にあるように、監督はリカルドフレッダさん、マリオは並列されているのですが、撮影、特殊効果のクレジットです)の走り、吸血鬼の原型的なストーリーが展開されます。
というわけで、マリオバーバコレクションの中にこのタイトルは明示されない、なので知らない方も多い。実質は絵作りとしての技術が十分反映されている、マリオ作品といっても十分に納得、
初期は永遠の命とか、仲間を増やすために人ののど元に「かみついた」わけではございません。
それは、いまでいう「血液」の病、に対処できない人々、輸血の無い時代にあわれな病人をどうやって救うか、という切実なる思いというのがまずありき。そして血液をもらえばもちろん相手は「死んで」しまう。
だから「特権階級」の手段、秘密裏に行われている。
でもって次第にテーマは女性が美しさを失わない方法として若い娘の血をいただいちゃうというエゴイストのアンチエイジングの願望へと質が変換してゆく。
この映画では、もう化け物化した女吸血鬼のお話になっている。
あ、それにあのエイリアンの造形へも参考にされたとかの「不思議な火星人の干物」みたいなオブジェがバンパイヤのお屋敷にはあちこち飾られていて秀逸。
そういえばこれってどこかで見たような…干物?ひもの?ヒモノ?…どこでみたんだっけ
あ、これこれ! いたいた! ガンギエイ(英名:Jenny Haniver)です。
うっしし
雰囲気でエキストラ採用!
1957年ということでI Vampiriは白黒映画です。しかしカラーへの移行によって本来の映像芸術の根本的な要素「光と影」へのコンシャスはむし一歩後退して、とにかく鮮やかな華やかな映像を求めて時代は動く。もちろんそれはそれとして、実は光と影という存在を感覚するうえで必要なものの中に美しさの源が含まれていて、これこそが映像作家が表現力の問われるところ、という気がします。
キラキラと木漏れ日が頭上から降り注ぐとき、湖面の上に巻き起こる波紋の揺らぎに見惚れるとき、落ち葉を太陽にかざしてみるとその葉脈が奇跡的に美しいと感じるとき、僕たちの感性は研ぎ澄まされ、言葉を失い、沈黙する。へたな表現ではかえって色あせてしまう。
そして形をもつ全てのモノへ愛情ににた感情が生じる。
存在の刹那に感動して神聖な心になり、摩訶不思議な形状に感嘆し、愛情に近い感性と慈しみが湧き上がる。
光と影の芸術がどうこうとかいうまでもなく、自然物には無限大に拡大するコントラストの美学が含まれているではないですか!白から黒までの鮮やかなグラデの変化が眼前に蠢いているではないですか!
私たちは、目の前にある美に気づくべきだ!
…なーんちゃって。
映画の前にデザインの世界の話。アールデコとアールヌーヴォー。アールヌーボーといって連想しやすいのはアルフォンヌミュシャ。あの繊細な、植物的なデザイン。淡い色使いが、鮮やかさより線の細さを際立たせている女性的な絵画。タロットカードも連想する華麗さ。人と植物が同じような力で混在している。あたかも人間が溶け込んでいるように、軽い存在で描かれているので絵が重たくない。すっとしたたたずまいも渡来の釈迦仏のよう。この感じがマリオバーヴァの初期のゴチックホラーにみられる風合いです。そして、当然そこには連続する運動がゆっくりと目の前をよぎる。
先の白と黒のコントラスト、そしてアールヌーボーの絵作り。ここに昨今のビデオ作品にはちょっと見られない味わい深い映像美が完成している。
マリオバーバはカメラの技師で参加しはじめた経歴があるが、ここでもその腕が発揮されている。
陰影がないところに像は認識されない、というあたりまえのような事実が再確認され、その範囲で美しい絵作りを様々な小道具や奥行き感で観客に魅せる。これがイタリアの「職人」の技で絵画の世界で世襲制が多いことは映像の世界でもいえる、息子はウンベルトバーヴァ監督でダリオアルジェント御仁と「デモンズ」で脚光をあびたのはみなさんもご存知でしょう。
あらためてクレジットみれば、今回の紹介作よりもう少しあとの作品からさりげなくADの名前にウンベルトさんが登場している。
さて、そうした陰影の芸術である一方で、いまならばSFXで造るところの「変身」シーンがこれまたびっくりするほど「精巧」でこれって、1956年作って…すごいんじゃなかと?
では若い美人ヴァンパイヤさんが、血が不足して今まさに「老化現象」フル回転、のシーンがこちら。
もちろんこれが数十秒の間にすきまなくじっくりと変化してゆく↓
そして若い女性を犠牲にして今度は…復活!!
いやあびっくりんちょ。繰り返しになりますが 1 9 5 6 年ですよん。うーん、やりおるわい。
そういえばマリオバーバさんは親子で監督の家系でお父さんだから…バーバパパだ!
おっ、これってひょっとして「バーバパパ」の元ネタ、発祥に関わるのかも?新発見か。
…なーんちゃって。
こちらは「 i vampiri 」で探せばどこかで見られる作品ですからぜひお探しあれ。こちらがポスター。dvdジャケにはこれが使われている。バーバ作品は現在国内版のdvdはほとんどみられない貴重盤ですが、ビデマには輸入でたいていありますよ。
ストーリーとしてはつんとすました身分の高いご夫人が刑事などが捜査するために邸宅に訪れた時、殺人事件の捜査という名目に
「まあ、とんでもない言いがかりですこと!」
と言った感じで、威圧的に刑事達を追っ払おうとした、そのすぐ後に突如若さのエネルギー切れ「発作」でみるみるその美貌がくずれていく…
ただ事ではないということで一度は帰りかけたが、慌てて戻って来た刑事達もその異常な出来事に唖然としてしまう。
あっというまに老婆になる婦人、その声もしゃがれた聞き取りにくい発声に変わり、見た目の変貌にさらに恐怖を付与する。女性がこんな変貌したら…残酷な話ではあるな、いくらバンパイヤでも。
人間って見た目の造作がどうしてこれほどに気になるのかな、しかも自分でもそんなに気にしていないつもり、人の顔だってそんな気にしていない、…つもりでも無意識レベルでそういう見た目でいうこともやることもガラリと変わっているに違いない。 ちょっとイヤな顔したらもう、この人やる気なし!とか勝手にマイナスに受け取られたりなんて割に何処にもある展開。いっそのこと能面かぶって外出したらいいんじゃないか?僕もみんなも(笑
とにかく、そんな衝撃かつ残酷のラストシーンとなります。
かなりショッキングなお話。
こちらの美貌のバンパイヤさん役は
ジャンナ マリア カナーレ(GIANNA MARIA CANALE)1927年生まれのイタリアの女優
余談ではあるが有名なOlivia Husseyの主演のロミオとジュリエット-1968から、4年遡る1964年にリカルド監督はやはりロミオとジュリエットを監督している。
この「ロミオ…、が一番いい」という通な方もいるようです。
今回、資料で「VANPIRI画像」とか色々探していたら、突如こんなおじさんの写真が…??
あれ?なんか口元が…?
ではまた。