映画チラシの地層学③

今回は、映画がリバイバル上映される経過での映画チラシの変容について話したい。

ちなみに、映画チラシは一般的に、その映画が古くなれば古くなるほど”初版”と呼ばれる1回目の上映期間に刷られたチラシの価値は上がる。そしてリバイバル上映の回数が少ないほど、つまり3回目のリバイバルより、2回目のリバイバル上映のチラシの方が高くなるものだ。

そして、リバイバルを重ねるごとにその映画チラシもその時代特有の紙、印刷技術、デザインで作りなおされたりするので、推しの映画のリバイバルごとのチラシを集めるのもまたマニアの楽しみでもある。

この同じ映画チラシの変容の妙についてボクが持っているチラシから紹介しよう。

まずは以下の1961年制作、アラン・レネ監督の「去年マリエンバートで」のチラシをご覧いただく。

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上段左端のチラシが1964年の日本初公開時のものである。

サイズは、180m×100mmでB7サイズより一回り小さいサイズであり、現在一般的なチラシのB5サイズ(182mm×257mm)からすると、結構小さい感じである。そして紙質はゴワゴワした感じのわら半紙的なもので、色は単色である。

真中のチラシは左端のものより少し後に出たようだが、映画の公開年は不明。サイズは182mm×128mmでB6サイズである。左端の初版のチラシよりは一回り大きいが、紙質は左端と同じわら半紙タイプで単色である。なので、年代的には初版のチラシと同じ1960年代だったと思われる。

そして、右端のチラシが1983年公開時のものである。80年代にはすでにおなじみの182mm×257mmのB5サイズとなり、紙質もわら半紙ではなくなり良い紙質になっている。80年代はサブカルチャーの全盛期で、哲学的だったり文学的だったり難解だったり斬新だったりするアート作品をポップにファッショナブルに楽しむサブカルチャーが一気に大衆化していく時代であった。なので、この「去年マリエンバート」という文学界のヌーボーロマンの旗手アラン・ロブ=グリエが脚本し、映画界のヌーベルバーグの一人アラン・レネが監督した、このシュールで難解な作品が待ってましたとばかりリバイバルされた時代である。当時、西武系デパートのテレビコマーシャルで「去年マリエンバートで」の庭園シーンが使われていた。

80年代の方は、デザインも左側二つの60年代の主人公の顔つきだけを強調する、大人のドラマ性のあるものと違い、チラシ半分に、不思議なイメージで人間が立ちどまっている庭園が協調され、映像的感性にうったえるようになっている。

そして、最後の2段目のチラシは、一番新しく2019年リバイバル公開時のもので、4K・デジタルリマスター版ある。サイズは現代の映画チラシサイズのB5サイズであり。デザインも、立姿の女性が銅像のように立体的にきれいに映っていて、フィルムを刷新して4K・デジタルになりました的な現代感が出ている。

 

 

つづく

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