緊縛ショー・喜多征一『逝かせ縄LIVE』を見てきたぞ!

 2022年11月20日(日)、東京と名古屋に道場をかまえる緊縛師・喜多征一さんによる『逝かせ縄LIVE』を見てきた。

 わたし自身、喜多道場で受け手をはじめて約1年になる。そちらでは生徒さんの練習相手として縄を受けたり、先生のお手本を見せるため縛りの流れを一部実演することはあるが、あくまでも「縛り方」や「心構え」のレッスンであって、プレイと呼べるものではない。

 

 しかし、マイペースに道場通いをして身も心も着々と縄に慣れてきたし、『逝かせ縄LIVE』を鑑賞しては「いいな……」と感嘆していたので、先日おもいきって喜多征一先生の『完全個室プライベート縛り(緊縛セラピー)』を受けてきた。これによってあらわれる効果は十人十色だとおもうので、何がどう良いかを説明するのは、正直とても難しい。

 

 わたしの場合は、縄で縛られれている120分、ほぼ号泣していた。信じられないかもしれないが、縄がはじめに左腕から右腕を通りきったあとにもはもう感情が揺さぶられ、浮き彫りになっていた。まわりには誰もいないのに、なぜここにきてまで「内側にある何か」を隠そうとするのだろう……?もう、いいんじゃないか……?とおもったときには、涙がぶわっとあふれでるのを止められなくなっていた。体感ではきもちよくて、心情としては「何も我慢しなくていい」とふだん抱えているしんどさや切なさ、後ろめたさのようなものが解放されるようなかんじだった。具体的なエピソードをおもいだしていたわけではないが、じぶんでは気づかないところできっと無理をしていたのだろう。そういう反応がでるという予想があったわけでもなかった。とにかく、終わったあとにはめちゃくちゃスッキリしていた。

 

 今回の『逝かせ縄LIVE』は、そういった実体験もありながらの鑑賞となった。

 縄の受け手(緊縛モデル)は4名。初出演の新人1名(なおさん)と、ショー歴2回のかた2名(鳳さん、蓮花さん)、名古屋道場の人気モデルこはるさんである。四ツ谷のライブ会場は「畳」のすぐそばに客席(アリーナ席)があり、扇状に座席が設けられている。こちら、ショーならば真正面から見たいきもちになりそうだが、喜多道場の生徒さんによっては真横や斜めからの視界をほしがるかたもいる。なんと、後ろから見たいというひとも……(真後ろ座席はステージの都合上やや困難)。理由を伺うと、なるべく「縛り手」である喜多征一先生の視点を得たいというおもいがあるからだそうだ。なるほどなあ……。

 

以下、過去記事より抜粋

「逝かせ縄」とは、その名が指すように縄で相手を縛ってイかせてしまう。逝くまでの過程や、逝っているであろう瞬間、逝ったあとの反応はさまざま。しかも、心身のコンディションによって変化する。この舞台は、まさに「生もの」だ。縄で安全に拘束する方法を学ぶことは第一に必要な心得だが、「逝かせ縄」では受け手がきもちよくなる縄の圧しあてかたや導線、受け手に不快感を与えないやり方、正しい身体の使い方や力の入れ具合、観ているほうにも格好よく映る姿勢の取り方などを学ぶことができる。

▲一番手の「なお」さん。着衣は黒のランジェリー。先生の衣装は濃い紫、縄は赤色。逝く(イく)という感覚を端的に1つのニュアンスであらわすのはとても難しい。なおさんが縛られる姿を見ると、女性の逝きかたにはいくつかの種類があるというのがわかってなんだか安心する。声はあまりださないのに、全身全霊をもって喘ぐから四六時中ステージで絶叫しているようにもみえる。静かなのに猛々しい。ああいう域に到達するには、「縛り手」と「受け手」のあいだにある心の壁をとっぱらうだけでは無理があるだろう。モデル本人が、縛られることで奏でられるじぶんの身体の響きに「これがほしかったの」と気づいたり、安堵したり、納得したり、のめり込んだり、愛をかんじたり、無我夢中で何かを解き放ったりする過程が必要なんじゃないかとおもっている。なおさんは、それができる人だ。

▲ニ番手の「鳳(おおとり)」さん。着衣は赤いボディに黒の袖とタイツ。先生の衣装は白、縄は紫色。「痛みへの耐性が強いから、じぶんはMではないとおもう。どちらかというとSっ気のほうが勝るんじゃないかな」というのがご本人の見解らしいが、喜多先生はそんな鳳さんの快感の幅を広げようと縄でじわじわせめていく。前回同様、鞭をあてると「アハハ!」と笑ってしまうが、宙に吊り上げられて逃げられない、ある種の極限状態で起こる「笑い」とは何だろうか。じぶんがどんな状況にあるのかを客観視したときにおもわず漏れる期待や後悔、喜びや恐怖、恍惚感、本音または上辺の感情といった「いま、背負っているもの」が笑いとなって吐き出されているとしたら、鳳さんはまだまだ変わっていく要素があるのかもしれない。わたしは鳳さんが開花していくのを、この目で見たい。

▲三番手の「蓮花(れんか)」さん。着衣は青色のワンピース系のランジェリー。先生の衣装はクリーム色、縄は赤・黄・緑の3色混合。前回のフェチフェスblogで「40代の受け手やモデルがふえている」旨を伝えたが、年輪を重ねているひとほど、表現したくてもうまくオモテにだせずにいるものや、無意識に閉じこめている何かを解放したいきもちを抱えていることが多い気がする。蓮花さんもその自覚のある受け手さんだったが、「ああ、変わったな……。」と、ライブを観ながら強く感嘆した。その姿が羨ましくもあり、わたしもああなりたいと涙してしまった。当然だが、ステージでは他人(観客)の目にさらされる。なので、「意識的にじぶんをきれいに見せようとしてないですか?」といじわるな質問をしたことがあるのだが、もうそんな愚問はおもいつかない。それでも、性的な爆発というべきか、ブレイクスルーはまだ起こっていないはずだ。蓮花さんは、まだイケる。

▲四番手の「こはる」さん。着衣は白のランジェリー。先生の衣装は黒色、縄は赤色。喜多道場は東京と名古屋の2拠点あり、こはるさんは名古屋の受け手をしている。四ツ谷の『逝かせ縄LIVE』は初出演となるが、ステージ歴は長く人気モデルである。わたしの第一印象は、なんて縄の映える肢体なのだろうかということ。一縄一縄の入り具合がとてつもなく魅力的なのである。肉付きのよさだけでは決して賄えない器(うつわ)があるような……。

 他のモデルさんも含め、今回はとくに「緊縛は最高のオートクチュールである」という喜多先生の言葉がおもいだされるなあ……。こはるさんが心地よく縄を身にまとい、安らぎをかんじることで、吊られているあいだは天使のようにも見える。けれど、これがもし真逆の感情で臨んでいたらどう見えただろうか。なおさんには至極の快楽を、鳳さんには性感の新境地を、蓮花さんには性の深淵からの浮上を、こはるさんにはどんなときでも頭をなでてくれる不変の愛を、「緊縛」を通して授けているようにかんじた。

 

 いやはや、『逝かせ縄LIVE』の記事が回を増すごとにオタク語りになっていくな……。

 

▼次回 12月25日(日) 喜多征一『逝かせ縄LIVE』名古屋 ※東京と名古屋でのライブ開催を毎月交互に繰り返しています。よって、2023年1月は東京、2月は名古屋の予定。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA