喜多征一『逝かせ縄LIVE』in 新宿ROSSOを観てきた!

 20231126日、四ツ谷の某スタジオから新宿ROSSO(ロッソ)に場所を移しての初舞台となる喜多征一『逝かせ縄LIVE』を観てきた。緊縛モデルは京さん(初登場の新人)、ねねさん、蓮花さんの3名。

 これまでは4名を基本としていたが、今回からはひとりあたりのショータイムを十分とれるようキャスティングしている(各60分~)。じっくりと縛ることで、より一層それぞれの個性、好み、感情、無意識にあふれでる物語を観察しやすくなったのではないかと思う。

 ステージは照明のみで無音縄や鞭の音と舞台に上がった人の声だけが耳に入ってくる。ライブが始まる前こそ緊縛師の喜多征一さんが談話をして客席にただよう緊張をほぐそうとするが、ひとたびライブが始まれば息をのむほどの集中力で皆を魅了していき、和んだ心をキュッと引き締めてくれる。もちろんゆったりとした気持ちで眺めてよいのだが、目の前で行われてゆくことが私たちの心を弛緩させないのである。

 

 「緊縛は最高のオートクチュールである。」と、喜多征一さんは言う。ライブを観ていると感じるのだが、単に緊縛のワザをステージごとに変えているわけでも、披露する緊縛の型をあらかじめ決めているわけでもない。モデルはステージに上がるところからずっと様子を観察されており、その日その人その瞬間のコンディションに寄り添った縛りが提供されてゆく。

 ここで言う「寄り添う」とは「全力で向き合う」ことであり、手を抜くとか、手綱を緩めるとか、適当にやるなんてことでは決してない。かといって、ただキツさや厳しさや強さを与えるわけでもない。

 モデルの衣装はワンピース、ランジェリー、ボンデージファッションなどさまざま。「それくらいならある程度の見通しが立っているんじゃないか?」と思うかもしれないが、実際はまったく逆。何がきてもいいように準備されている。なお、ライブ直前までは下記のような感じだ。

ライブ当日(ほぼ直前)までモデル(受け手)の衣装を知らない

モデルの衣装やそのときの様子によってご自身の服装を決める

縛りかたや道筋・構図などを事前に考えておくことはしない

染め縄の色を多数準備しておき、全体のデザインをみて合わせる

モデルの格好に特別な制限は設けておらず、好きな衣装を着てよい

 喜多征一さんいわく、「縄で縛るんだから多少やりにくい恰好ってのはあるよ。でも、こっちはなにも言わないし、みーんな好きなものを身にまとってくる。モデルの彼女たちを含めて、僕のところに縛られにくる人に共通しているのはふだんの美意識が高いところ。手入れをおざなりにしない。きれいな姿で縛ってほしいと思っているし、その姿を写真におさめたいともおもっているわけだから、本番当日まで自分の身体をじゅうぶん磨き上げてくるんだよ」

 

 確かに、ステージでは「これが今のサイコーの私です!」と言わんばかりに堂々としたモデルたちがあらわれる。観客席で成り行きを見守り、すべての目撃者となる身としては、開幕の彼女たちの姿や様子がどうだったかを覚えておくのがミソかもしれない。

※喜多道場での「受け手」「緊縛セラピー」「緊縛モデル」に興味をおもちの方はこちら

 『逝かせ縄とは、その名の通り、縄で相手を縛ってイかせてしまう。逝くまでの過程や、逝っているであろう瞬間、逝ったあとの反応は人によってさまざま。しかも、心身のコンディションによって変化する。

 この舞台は、まさに「生もの」だ。一人ひとりが刻一刻と表情をかえていき、どこかで絶頂を迎える。その瞬間をまるで物陰じっと覗き込むような心境で見入ってしまう。こんなにオープンなのに、こんなに秘められたものってあるんだ……。と、複雑なきもち

 緊縛は、どんなやり方にも絶対安全安心ということはない。喜多道場(東京・名古屋)では、それが前提にあると心得てなるべく身に負担をかけない方法、事故につながる理由を理解してもらいながら教室では「逝かせ縄」の手法や極意が伝えられていく。

 受け手が気持ちよくなる縄の圧しあて方やさまざまな導線、不快感を与えないやり方、びしっと揃う縄の目の整え方、より美しくなれる魅せ方、正しい身体の使い方や力の入れ具合、受け手だけでなく縛り手のほうも格好よく映る姿勢の取り方など、本当にこまかなことを学ぶことができる。

 ライブは東京と名古屋を順繰りに毎月開催されている。2023年12月は名古屋、2024年1月は東京というかたちで続いていくので、興味のある方は是非一度『逝かせ縄LIVE』を観て欲しい。

 

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