オキュパイ・スクール 2015夏バージョン@高田馬場・白夜BSホール
「オキュパイ・スクール 2015夏バージョン」開校!!
8月9日、高田馬場の白夜BSホールにて、「オキュパイ・スクール 2015夏バージョン」が開催された。
「オキュパイ・スクール」は、身体改造の第一人者にして、フェチフェス出展経験もあるケロッピー前田さん主宰。
“俺たち、何をオキュパイするか、教えてやるぜ!!”
『オキュパイ・スクール』は、21世紀のいまを生き抜く
ための新しい学校です。身体改造/メディア/セックス/ アートの視点から各界のオーソリティが熱烈な講義を提供 します。夏バージョンは、 総勢12名の講師が、それぞれプレゼン&クロストーク、 アクティブなアイデアと実践の方法に踏み込みます。
この言葉からも分かる通り、アートや学問など、様々な分野の現在に触れられるのが「オキュパイ・スクール」だ。知の最先端を目の当たりにした受講者は、知的好奇心を刺激され、自らも動き出したくなるのである。
私が「オキュパイ・スクール」に参加したのは今回で2回目。2014年12月6日、私は、第1回目の「オキュパイ・スクール」に参加した。ケロッピー前田さんだけでなく、石丸元章さん・じゃぽにかさん・水嶋かおりんさんの講義もあり、「こんな世界があるのか……」と衝撃を受けたのを覚えている。あれから8ヶ月後、私はふたたび「オキュパイ・スクール」の受講生となった。
「オキュパイ・スクール 2015夏バージョン」では12名の講師が登壇を予定した。
じゃぽにか・石丸元章・水嶋かおりん・花房太一・ピスケン・釣崎清隆・笹山直規・林千歩・飯盛希・やおき・奥村瑞恵・ケロッピー前田
各講師が自らの専門分野や興味関心を熱く語り、受講生は一心に耳を傾ける。クロストークも交えてのプレゼンでは、身体改造や秘宝館、グロテスク表現などのアングラ文化から、哲学や芸術論などの学術的分野まで、カオスな様相を呈しながら語られた。その模様を今回の記事では紹介したい。
アングラ文化と性風俗の行方
トップバッターは、「オキュパイ・スクール」主催者のケロッピー前田さん。
「バイオハッカー」や「ボディハクティビズム」といったキーワードから、身体改造の未来について講義した。1998年と2002年、イギリス・レディング大学のケビン・ウォーリック教授は、自らの腕にシリコンチップを埋め込む手術を実施し、身体とパソコンとを直接つなぐ実験を行った。ウォーリック教授の実験は未来の身体表現を予感させるもので、身体改造アートにも少なからぬ影響を与えたという。腕に人工的な耳を埋め込んだステラーク氏や人体にフックを通して吊り下げるパフォーマンス・サスペンションなどを紹介しつつ、前田さんは身体改造とアートシーンがクロスする可能性について示唆した。
秘宝館に並々ならぬ愛情を注ぐ奥村瑞恵さんは、北海道秘宝館の閉館前の姿や閉館後に蝋人形を引き取った経緯について解説した。スライドに映された怪しげな映像からは、今は無き北海道秘宝館の混沌とした様子が伝わってきた。
一方、死体写真家の釣崎清隆さんは、グロテスク表現に不寛容になったドイツの動きに対する危機感を語った。
性風俗に関する講義をする予定だった水嶋かおりんさんは、諸事情によりお休み。水嶋さんの著書『風俗で働いたら人生変わったwww 』(コア新書)の担当編集者さんが代理で登壇した。
「風俗がポピュラーになる一方で、風俗への風当たりが強いことに違和感を抱いていました。顔出しで活動されているかおりんさんならこの状況を変えられるのではないか、と思って執筆依頼しました。」
編集者さんは、本ができるまでのリアルな裏話を語った後、性に対する取り締まりの強化へ警鐘を鳴らした。
アートと学問・社会の境界線上にて
アートと学問の関係を学術的に語る講義では、受講者も脳ミソをフル回転させなければならなかった。アートコメンテーターの花房太一さんは、「資本」「芸術」「Nation」という3つの観点から、夏休みに読んでおくべき本を紹介。「紹介した本の読書感想文を書いたら、私に送ってください。添削して送り返しますので」と夏休みの宿題みたいなノリの中で、それぞれの本の読みどころを解説した。
美術批評を専門とする飯盛希さんは、「多世界解釈とコギト的歴史主義の限界」をテーマに、多世界解釈の方法論がアートを豊かにするのではないか、と問題提起した。過去の歴史に捕われないイマジネーションの発露によって芸術の可能性はさらに広がっていく……そんな未来の方向性が語られた。
アートと社会の関係についても、特に経済面でシビアな問題を孕んでいる。そこに鋭く切り込んでいくのは、ロジカル・アート・スクール主宰のやおきさん。「アーティストにはお金が無い。そんなアーティストが一生活動していくのはどうすべきか?」という切実な問題を解決するため、ロジカルシンキングの重要性を提案した。また、GONZO作家の石丸元章さんは、土木建築系カルチャー誌『BLUE
現代アートの現場に立ち会う
難解で敬遠されがちな現代アート。しかし、「オキュパイ・スクール」でアーティストさんたちのプレゼンを聞くと、現代アートへの親近感が芽生えるから不思議だ。
炎上アート集団・じゃぽにかは、主要メンバーである杉様が実際に炎上してしまった事件の真相について面白おかしく解説。最後にカラオケをして終わるという、何ともシュールな講義だった。鳥の姿で登場したのは美術家の林千歩さん。林さんが制作した映像作品を上映しながら、中高生時代のトラウマなどについて語った。おしべとめしべに扮した男性2人が登場する映像にはBLオーラが漂っていて、受講生は息を呑んで見入っていた(笑)
雑誌『BURST』元編集長のピスケンさんは、金欠に生活を脅かされ帰郷、代わりにビデオレターが上映された。ピスケンさんの支離滅裂気味なお話に、「おまえがしっかりしろ!」と受講生から怒りの声(?)が飛び交った。2015年9月30日には、新宿ネイキッドロフトにて「webマガジン BURST Zero発刊記念トークライブ『俺にだって悲しみがあるんだ』」が開催予定である。
トリを飾ったのは画家・笹山直規さん。笹山さんは、2015年8月8日(土)から8月23日(日)まで、阿佐ヶ谷・TAV GALLERYで開催された『現在幽霊画展』をプロデュース。『現在幽霊画展』には、フェチフェス06のメインビジュアルを担当したあおいうにさんを始め、20名の作家が参加した。各作家が思い描く「新しい幽霊画」を自由に表現しているという。笹山さんは『現在幽霊画展』について、「理屈はいったん置いといて、まずは僕らの作品を実際に見て欲しい」と熱っぽく訴えたのだった。
「オキュパイ・スクール」の魅力について
「オキュパイ・スクール」の魅力はジャンル横断的な講義の数々である。どうでもいいようなことを淡々と教える学校の授業とは異なり、各界の第一線で活躍する講師陣が、リアルな現場体験を語るのだ。そこから得られる知的好奇心は、学問やアートを志す者にとって一生の財産となるだろう。
停滞した日本社会を「オキュパイ」する知の最前線として、「オキュパイ・スクール」がこれからも定期的に開催されることを願っている。
写真・文=みみずく
11月3日(火)文化の日、ブブカpresents『オキュパイ・スクール 2015秋バージョン』開催決定!!
講師:じゃぽにか・石丸元章・小鷹拓郎・花房太一・ケロッピー前田 and more @白夜BSホール START 18:00 入場料 1500円