Panna cotta (TH ART Series)発売記念 駕籠真太郎 原画展示販売会@中野タコシェ
駕籠真太郎先生は、「奇想漫画家」を自称し、エロ・グロテスク・猟奇・スカトロなど、成人向けの漫画を中心に執筆している。駕籠先生の作品は、可愛らしい女の子が排泄したり、切り刻まれたり、グチャグチャになったり……と特異な絵柄が印象的だ。ストーリーはブラックユーモアに富み、時に哲学的で、読者の常識に揺さぶりをかけてくる。賛否の分かれる作風ではあるが、日本国内のみならず、海外でも高く評価されている。
駕籠先生はフェチフェス常連出展者のお一人でもある。同人誌やグッズの販売に加えて、人間の顔に様々な特殊効果(切り刻んだり、破裂させたり、目玉を飛び出させたり……)を施す特殊似顔絵が大人気。私も、イベントで駕籠先生にお会いするたび、似顔絵を描いていただいている。そうしたら、駕籠先生の特殊似顔絵が手許に5枚も……。というわけで、駕籠先生ファンの私が、今回、「Panna cotta (TH ART Series)発売記念 駕籠真太郎 原画展示販売会」へ取材に行ってきた。
今年4月、『駕籠真太郎画集 Panna cotta』が発刊された。それを記念した原画展示販売会が、中野ブロードウェイ3階にあるタコシェさんで開催中。
店内には、本棚の上に駕籠先生のモノクロ原画がズラッと並ぶ。
見上げると、駕籠先生の描いた女の子達と目が合ってしまう。彼女達は例外なく普通ではないのだ。
「群生」「水車」などのタイトルを付された女の子たちの顔面は、崩れていたり、 破裂していたり、異物がニョキッと生えていたりと痛々しい。しかし、彼女たちは苦悶の表情を浮かべるのではなく、自らの身に降りかかった異常事態を誇るかのように笑みを浮かべている。駕籠先生の描く猟奇からは、明るく楽しい雰囲気が滲み出ていて、見る者を思わずニヤッとさせてしまう魅力があるのだ。
また、「知恵」「家族」などの作品では、世間的に良しとされる価値観をブラックに笑い飛ばすユーモアが感じられた。たとえば、「知恵」という作品では、男性の頭部が壊れ、脳ミソが飛び出している。そこには、「頭が良い」ことばかり重視される現代社会に対するアイロニーが込められているのではないか?この作品を描きながら、駕籠先生はほくそ笑んでいたに違いない。
展示されている作品は、CDのブックレットやTシャツの原画として使用されたものばかり。書籍には未収録な作品なので、誰かの手に渡ってしまうと今後永遠に見られなくなる可能性も高い。駕籠先生のファンならば、是非一度は鑑賞しておきたいところだ。
リーズナブルなお値段でお求めやすいこともあり、売約済みシールの貼られた作品も多かった。タコシェ店長さん曰く、「女の子の絵が、特に人気がありますね」全身穴だらけになっている女の子や、顔面から観覧車が飛び出している女の子は、確かにマニアの心に訴えかける魅力を醸し出していた。
タコシェさんには、今回の原画展に合わせて、駕籠先生のコーナーが設けられていた。上の写真の右から2番目が、新刊『駕籠真太郎画集 Panna cotta』である。
今回は趣向を変え、「駕籠真太郎の個展やグループ展で展示発表された描き下ろしイラスト」から作品選びをしている。なので、……一枚絵としての完成度を優先させたものが集まったやや真面目(?)な印象の画集となってしまったかもしれない。(『駕籠真太郎画集 Panna cotta』前書きより)
この前書きからも分かる通り、『Panna cotta』では、駕籠先生のアートな側面を堪能できる。ここ最近、駕籠先生の個展が都内各所で開催されている。それらを見逃してしまったファンには嬉しい一冊である。私もサイン入りの画集を購入し、部屋に籠もってニヤニヤしながら楽しませてもらっている(笑)
右側に見える大きめの画集『INDUSTRIAL REVOLUTION AND WORLD WAR』は、イタリアで出版されたサイレント漫画である。350部しか印刷されていないそうで、その一部がタコシェさんに置かれていた(ので僕は購入した)こちらは、ファンタジーな絵柄で戦争の悲劇が描かれていて、「何が正義なのか?」を問いかけてくる哲学的な作品だ。
また、ストラップなどの立体作品も充実していた。これらの作品は、駕籠先生の公式HPから通販で購入できる。しかし、タコシェさんでは、実際に作品を手に取って、その造形をしっかり確認してから購入できる。「今後も、駕籠さんにはグッズを納品してもらう予定です」とタコシェ店長さん。駕籠先生の立体作品に興味のあるファンには嬉しい限りだ。
5月3日にはサイン会が開催された。駕籠先生は、参加者全員にネームをプレゼントしたり、イラストのリクエストにも応じたりしたという。ファンも、購入した作品全てにサインを入れてもらったり、一緒に記念撮影してもらったりと、楽しいひとときを過ごせたようだ。サイン会参加者の中には、ヨーロッパや中国・台湾出身の外国人も多かったとか。駕籠先生のグローバルな人気がうかがえる。
『Panna cotta (TH ART Series)発売記念 駕籠真太郎 原画展示販売会』は、今月15日まで。ファンは、中野ブロードウェイ3階のタコシェさんへ是非足を運んでほしい。
駕籠真太郎先生公式HP「印度で乱数」:http://www1.odn.ne.jp/~adc52520/
タコシェ公式HP:http://tacoche.com/
写真・文=みみずく
※トップのイラストは、駕籠真太郎先生から許諾をいただいて掲載しています。