可愛い棺桶屋『GRAVETOKYO』で入棺体験をしてきた!

 かわいい葬儀のためのかわいい棺桶をオーダーメイドで作るGRAVETOKYO』が、横浜ビブレ3階でポップアップを展開している。期間は2023年7月7日~23日まで。フロアのコンセプトが「CLASSIC&EDGEファッション」でゴスロリ調の店舗が多いため、今回は「ゴシック&ロリータ」をテーマにしたオリジナル棺桶を展示販売し、入棺体験ワークショップも行っているという。ポップアップ期間後は東京都墨田区の「大堂芸術館」にも週1ペースでいらっしゃるとのこと。要お問い合わせ。

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◆デザイナー:布施美佳子さん
◆GRAVE TOKYO インスタグラム(https://www.instagram.com/mikera1973/
◆GRAVE TOKYO Twitter(@arekim1973
▼GRAVE TOKYO Base(https://gravetokyo.thebase.in/

 

 「生前葬」ってどんなかんじだろう……?という好奇心だけで入棺体験を決意した。先入観を持ったり、いろいろ考えすぎてしまわないようWeb検索は避け、事前の情報収集は一切ないまま仕事の合間にサクッとソロで30分。看板とメニューを見てちょっと気になっていた店をのぞくようなノリ。もし他にお客さんがいたら今日はやめてまた明日にすればいいや!くらいの軽い気持ちだった。あまりにカジュアルな入棺希望者だったせいか、ちょっと驚かれていた(?)ようす。

 正直に言うと、「棺桶に入ったところで何も感じないのでは?」とおもっていた。そして、「やっぱり何も感じなかったな~!」とヘラヘラ笑っているんじゃないかなあ、と。……なぜそんな予想になったのだろうか。

 

 わたし自身、親族の葬儀に立ち会った経験は幼いころから何度もあるし、つい数年前の実母の葬式では泣きすぎて過呼吸になりかけたほど感情を揺さぶられた。他人の死、身近な死でつらいおもいをしているし、じぶんがいなくなったあと残された家族が困らないよう諸々を整理するようにもなっていた。そのわりに、「葬儀」を自分ごととして捉えたことは一度もなかったのだ。死と葬儀、一緒のようで違う。誰の視点でとらえるとどうなるか、考えたことがなかった。些細なことのようにもおもえるが、それは入棺体験が終わってから気づいたことだ。

 

▼かわいい棺桶マークの看板。

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▲RPG『ドラゴンクエスト』ではパーティを組んでいた仲間が死んだとき、まさにこういう棺桶に入ったまま行動を共にすることになる。蘇生魔法を唱えて成功するか、教会でレベルに応じたお金を支払うと復活させることができる。ゲーマーのわたしにはその印象が強いせいか、棺桶は「死体が安置された場所」であり「息を吹き返し得る状態」のようにも見えてしまう。……実際そんなことはありえないのだが、『GRAVETOKYO』の入棺体験では一時的にそれを可能にしてくれるような気がするのだ。

 

 わたしはまだ死んでいないし、死にそうでもなければ、死にたいとおもったこともない。棺桶に入るという行為を想像するだけでは「死」への実感が生まれなかった。もちろん、「生」はわざわざ深く感じようとせずとも共にある。棺桶に入るという体験を通してじぶんがどう感じるか、わからなくて当然だったのかもしれない。あなたなら、どう感じるとおもいますか……?

  

▼漫画『ミスター味っ子』『将太の寿司』『喰いタン』などの漫画家・寺沢大介さんがラフォーレ原宿で入棺体験したときのツイート。

 

▼YoutuberのCapsuleBunnyさんが横浜ビブレ3階まで入棺体験をしたときのツイート。わたしもこの黒いゴスロリ調の棺桶に入った。

  

▼わたしは複数参加のワークショップ形式ではなく、一人で入棺体験をするコースを選択。そこではまず「自分の最期はどんな最後?」という質問に回答していくことからはじまる。初見だし未予習だし、うまく書くコツなど分かりようもない。うだうだしても仕方がないため、直感で「こうだよな」とか「これが望ましい」とおもった通りのことだけを書くよう専念した。この先の人生に何らかの障害があってそれが不可能かもしれない……などというネガティブ発想は一切しなかった。わたしは100歳まで堂々と生きるし、誕生日に息子と娘に看取られながら老衰でスーッと逝く、よく生きた人なのだ。

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▼当日のファッションが黒を基調にしていたので、黒いフリルの棺桶を選ぶ。どこか「人の生き血を吸う不老不死のドラキュラ」感があってよい。人と接することで生気をもらっているじぶんにお似合いの棺桶だとおもう。片足からゆっくり入って、お尻を底につき、頭をぶつけないよう横たわってゆく。なんという丁寧なセルフ格納……。白い枕は意外とふかふか。中の生地はさらさらつるつるしていて、おもったより居心地がよい。

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▼映画やドラマで「棺桶(などの狭い箱)に閉じ込められ身動きとれなくなるシーン」を観たことはあるだろうか。これは自分からそういう状況になっていくときの足元を撮影したものだ。非日常的な空間にみずから赴くことへの高揚感がパンツの派手な柄にでている。デザイナーの布施美佳子さんとは冷静に話していたつもりだが、格好がはしゃぎすぎだ。

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▼棺桶の蓋が半分開いているようす、蓋は閉まっているが小窓だけが開いているようすをそれぞれ距離を変えながら何十枚も撮影してもらった。表情も目を瞑ったり、開けていたり、笑っていたり、カメラ目線だったりさまざまにとらえてくれる。サービスがすごい。後でスマホの画像を見返すと、とても安らかな微笑みを浮かべて中に収まっているものが数枚だけあった。緊張感や疲労感や高揚感といったテンションのアップダウンをおもわせない表情で、ただただ安心して「そこに在る」ような雰囲気だった。

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▼じぶんが居たあとのようす。棺桶に入っていたのは10分間(どれだけ中にいるかは指定できる)。完全に蓋を閉じ、真っ暗になったなかじぶんに向けた弔辞がはじまると、おもいがげず号泣してしまった。

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 曲を流さずまわりの声だけが聞こえるよう注文してあり、こぼれ聞こえる雑音から外が「生きた人の世界」なのを痛感する。涙がですぎないよう心にブレーキがかかる。突然の強い感情にじぶんでも驚くが、こうなったらこうなったでどこか安心する。誰も見ていない、見られない、中でどんな顔をして何を考えていようと自由だ。

 

 遠い過去のことがおもいだせず、つい数日前のことばかりおもいだす。はじめのカウンセリングで書いた内容はあれでよかったのか?と自問自答する。息子と娘に看取られたい気持ちに偽りはないようだ。希望寿命から逆算すると残り60年ほど生きる予定でいるが、わたしは「よく生きた人でした」と誰もが口を揃えて言う人生を歩んでいるだろうか。後悔も納得もなく、ただ疑問だけがある。

 

 尻が痛い。自力で動かせるんだから角度を変えよう。ああ、気分が台無しじゃないか、でもここにいたいとおもうよりはマシのはずだ。中学生くらいの女子の声が聞こえる。入るなら水色の棺桶がいいらしい。そうか、今わたしは黒色の中にいるぞ。語りかけたいが見知らぬ相手である。棺桶から突然おばさんが出てきたらどうおもうだろうか。じぶんは今どうおもっているんだろう。まわりの評価は気にならないけれど、淡々と自己観察する癖がついていることには少々嫌気がさす。涙腺は落ち着いてきている。あと何分だろう。もういいんじゃないか。10分が、ちょうどいいようで、やっぱり長い……。

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 実のところ、もっともっといろんなことを考えていた。出てからそれを伝えようとすると、また涙がでてしまい大変だった。人によって、棺桶の中でどんな感情になってしまうかは本当に十人十色なのだろうとおもう。なんだろうこの精神状態。絶対にこうなります、みたいな断定は何一つできない。でも、体験してみてよかったなとおもう。

 

 

布施美佳子さんによる、横浜ビブレ3階『GRAVETOKYO』ポップアップ期間中のTwitterでのつぶやき転載:いままで直接的にはお伝えしてませんでしたが・・・本当の死を選ぶ前に仮の死=入棺体験をお試しください。本当の死は引き返せません。入棺体験することで、死にたいと思っていた気持ちが思考に支配されているものだった、やりたいことや夢を思い出した、本当は生きたいのだ、と気付くことが多いです。|棺桶の中に入って蓋が閉まると、自分だけが異世界、つまりあの世にいるような感覚に陥ります。私の場合は「このまま火葬されても後悔はないのか?」と自問自答します。あなたは何を感じるでしょうか。そして蓋が開くと、この世に戻ってきた、生まれ変わったような強烈なリフレッシュ感があります。|全国各地で入棺体験は行われています。辛いとき・何かを変えたいとき・泣きたいけど泣けないとき、こういう選択肢もあるということを知ってほしい。デスカフェや勿論GRAVETOKYOでも話せます。死はすべての人のゴールです。もっと死をカジュアルに語ることこそが生きる希望につながると信じています。

 

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